“━━最後に残されるものは決して希望とは限らない”パンドラハーツ第22巻の感想ですネタバレ要注意!
PandoraHearts (22)(Gファンタジーコミックス)スクウェア・エニックス(2014/4/26)
望月淳
表紙は黒うさぎ(ビーラビット)のオズ。紅眼ver格好いいですね。1巻の時とはだいぶイラストが変わったなぁ。。。もちろん良い意味で。
特装版はレイシー&ジャック。何だか不気味なオーラを放っておりますが...これはドラマCDでの暴れっぷり(ネタ的な意味で)を楽しみにしておけ、ということなんですかね?(笑)。
自分は発売日まで通常版と特装版どっちにしようかな...と悩んでいたのですが、結局両方とも購入してしまいましたwドラマCDの感想も後ほど上げられればなと思います!
さて、前置きも済んだところで早速本編の内容に移りたいと思います。
まず、今巻は既存の巻とは違い5話分の内容が収録されています。実際に手に取ってみると分かると思いますが、中々の分厚さです。望月先生、発売に合わせるためにかなり無理をしたんじゃないかな。ですが、その分本編の内容もラストに向けてかなり濃いものになっています。カバー裏も遂にここまできたか、という感じですw
過去を改竄しようと目論むオズワルド&ヴィンセントを止めるため、始まりの街、サブリエへと向かうオズ一行。
途中のラトウィッジ校でブレイク組と再会。初期を思わせるような賑やかな雰囲気に。アリスとギル
(海産物)のコンビは癒しですね。
と、ここでブレイクはこれまた初期を思わせるような質問をオズに投げ掛けます。

ブレイク
「━━君は一体どこにいるんだい?」その質問に対しオズは
オズ
「俺は━━」
オズの返答が気になります。これまで本当に過酷な道のりばかりでしたからね。嬉しそうに話すオズの表情が印象的でした。
ヴィンセント
「僕も異端で君も異端なら
それは僕らにとっては“ふつう”のことだよ」なるほど、ヴィンセントとツヴァイとの共通点は「異端であること」でしたか。お互いに異端な存在であるからこそ2人でいる時は”ふつう“でいられた。ツヴァイにとってヴィンセントだけが心の拠り所だったんですね。
にもかかわらず、エイダとツヴァイ、2人の女性を置いて消滅しようとしているヴィンセントって...w
ジャックが鎖を破壊した影響でサブリエの空に沢山の道が出現し、大量のチェインがあふれ出てきてしまう。いよいよこの世界にも終わりが近づいてきていますね。

サブリエへと向かうのは初期メンバー5人。やっぱりこの5人が好きだなぁ。懐かしいというか、落ち着くんですよね。
初期の頃にあったギスギス感はもうなくなって、本当に和やかな雰囲気で...。
これまではお互いを利用したり、疑い合ったりしている形だけの不安定な関係だったじゃないですか。
でもこの一連のシーンを見て5人の間に確かに信頼感が生まれているのが感じられて...本当の意味で仲間になれたんだな、と。
ここはこれまで丁寧に積み重ねてきた人間関係の集大成とも言えるシーンになっていると思いました。お茶会...また開いてほしいなぁ。

前巻では一切出番がなかったジャックですが...何か今にも消滅してしまいそうな姿ですね。まあジャックの躯であるわけだしそう簡単には消えてくれないんだろうけど。
ジャックの願いは今も変わらないまま。ここまで来たら諦めるわけにはいかないでしょう。一歩も譲る気配はありません。そんなジャックにオズは...
「それは本当にレイシーが望んだこと?」確かにジャックが一方的にレイシーの願いを決めつけているだけで、レイシー本人がこの展開を望んでいるとは限らない。
ジャックを止めることができる存在がいるとすれば、それはもうレイシーだけ、ということですね。レイシーに真意を確かめて、ジャックの願いを否定してくれれば終了ですし。たぶん。
となればオズが提示した取引の内容は「世界をアヴィスに還すことがレイシーの望んだことではないと分かったら潔く諦めて消滅しろ」とかかなぁ。結構大胆な賭けのようですがもうこれ以外方法ないだろうし...オズのアヴィス墜ちも時間の問題。というか、最近のオズが冷静すぎて怖くなってきたwチートゲス英雄に取引を仕掛けられるようになるまで成長したなんてw
一方、ひと足先にオズワルドの元へたどり着いたブレイク。
ブレイク
「ここは...なんだ?」たどり着いた先の異様な空間に違和感を覚えます。
オズワルド
「まるで...法廷だな...」この空間を造り上げたのはグレンの監視役であるはずの潜む瞳なのでした。前巻のラストで少し登場していましたね。
そして...
レヴィ
「オズワルドの言う通りここを法廷とするならば裁かれるのは誰なんだろうな?」レヴィ&リーオキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!両者とも久しぶりの登場ですね!リーオ君は安定の体育座りだけれどもwレヴィは完全に傍観者という感じ。
「この世界は一つの『物語』に過ぎない」
潜む瞳の役割は一つの「物語」の始まりから終わりまでを記録しそれを最果ての「書庫」へと持ち帰ること。で、グレン達の認識の及ばぬところに「物語」は無限に存在しているんだとか。その一つ一つに潜む瞳は存在し、全ての物語が違った結末にたどり着くように分岐点を与えるのだと。バスカヴィルもグレンもそのために蒔かれた種でしかない。そしてこの空間は「物語をここで終わらせることは妥当か否か」を同じ潜む瞳達で決める場所。つまり潜む瞳にとってはこの世界は一つの観察過程の範囲内に過ぎないものだということですね。
またまたダークファンタジー色が強くなって参りました。潜む瞳達は裏ボスというよりは完全に理解の届かない場所にいる存在という感じですね。以前まではただのバスカヴィルのBBAとしか認識していませんでしたが、まさかこんなダークファンタジー色を強めてくれるキャラだとは思ってもみませんでした。本当に無駄なキャラが一人もいないですね。必ず何かしらの役割が与えられている。
レヴィ
「これが世界だというのなら...
あまりに滑稽な物語だ!!」潜む瞳達の観察課程でしかない世界。そんなこの世界を「滑稽な物語」だと称するレヴィ...これまでにも頻繁に「滑稽なお伽噺」という言葉が使われていましたね。こんな皮肉な形で繋がってくるとは。
リーオ「おかしくない... おかしくは...ないよ
もし本当にこの世界がただの物語で僕達の認識の及ばない所にいる「誰か」を喜ばせるためだけに存在しているんだとしても
...僕はこの世界を滑稽だとは思わない!」
おお、リーオの読書オタクの設定が生かされる時がきた!
エリオットやオズ、そしてヴィンセントと出逢うことができたこの世界を滑稽だとは思いたくないんでしょうね。16巻のオズの言葉はちゃんとリーオに届いていました。
レヴィ
「この空間は潜む瞳が作り出したもの
俺達グレンでは潜む瞳に力を制限されあの扉を開くことができない
だが...そこに禍罪の子がいれば━━」なるほど、潜む瞳によってグレンの力は制限される。でも、完全なるイレギュラー、潜む瞳達の理解の範囲外である禍罪の子の力を使えば、ということですね。潜む瞳が露骨に禍罪の子を嫌っていたのはこのためか。ここにきてヴィンセントの重要性が大幅にアップww
オズワルドvsブレイク!個人的にパンドラで最も見たかった対戦カードがついに実現!いやーまさかこの対戦が実現するとは。ずっとこの2人が戦ったらどっちが強いんだろうって思ってたんですよ。
まだ序盤ですが...オズワルドさんが一歩リード...かな?
疲労&失明というハンデがあるものの、あの小柄なリーオの体でブレイクを圧倒するオズワルドさんが流石すぎるwヴィンセントも参戦w
ブレイクの「いつの間にそんな博愛主義者になったんだ!」には笑ったww確かにそう思うよw
微かにヴィンセントとエイダのフラグが見えた...のかもしれない。

エイダとツヴァイのヴィンセントを巡る女の戦い。
エイダ
「知らないことは罪ではないわ!
罪深いのは知ろうともせず相手のことを決めつけてしまうことよ!!」エイダはヴィンセントと初めて会った時に既に彼の抱えている闇に気付いていたんですね。ただ綺麗なだけのお嬢様じゃないということをしっかりと見せつけてくれました。ボロボロになりながらもここまで言えるエイダは女の鑑。
妹のピンチの前にスタイリッシュに現れるオズ。ナイスタイミングですね。
オズ父の素顔がついに...
こんなに穏やかで寂しい目をした人だったのか...というのはオズの言葉ですが、本当にそう思いますね。エイダへの愛情は本物だったわけですから。ザイもまたジャックに運命を狂わされた悲劇の人物です。
最期まで父親と分かり合うことができなかったオズ。でもしっかりと自分の意志を伝えることができた。今までだったらずっと下を向いたままで何も伝えることができなかったでしょう。そう思うとオズは本当に強くなったんだなーと思えますね。安易な仲直り展開にしなかったところがいかにもダークファンタジーらしくて好きです。

この後のオズの表情がいいなぁ。ずっと堪えてきたけど、今回の父親とのやり取りで重荷のようなものから解放されてようやく泣けた...みたいな。そんな表情。
ブレイクvsオズワルドの続き
あー、そういえばブレイクも禍罪の子でしたね。すっかり忘れていました。それにしてもオズワルドさん強すぎワロエナイ。ブレイクでさえ手も足も出ないってどんだけ。こいつもうチェイン必要ないだろww
ブレイク
「私に彼を殺すことはできません」いかにシェリル様の命令と言えどオズを殺すことはできない。ブレイクの心境の変化、オズへの優しさがしっかりと伝わってくるシーンでした。今思えばブレイクも葛藤ばかりの苦しい人生でしたからね。だからこそオズの成長を誰よりも楽しみにしていたのは実はブレイクだったのかもしれません。
リーオ
「僕の許可なく
勝手に死ぬな、ヴィンセント!」オズワルド「お前の存在は私が責任を持ってこの世から消し去ろう」からのヴィンセント「じゃあ仕方ないね」の流れは誰もが
仕方なくねーよ!!とツッコミたくなったはずw
で、ヴィンセントが諦めかけたときにこの師従関係ですよ。熱い展開ですね。
ブレイクも言ってますがヴィンセントは過去にとらわれすぎているんですよね。もう少し自分の存在を肯定してみてもいいと思う。それができないからこそ苦しんでるんだろうけどね。自分のことを大切に思ってくれている人がいるってことに早く気付いて欲しい。
一瞬の隙を見てオズワルドの腕を撥ね飛ばすブレイク!
ヴィンセントはオズワルドを追って過去へ。マスター!とリーオのことを気にかけているのがいいですね。
残されたブレイクは既に満身創痍の状態...最後の力を使ってオズ達を過去へ送ります。ちょっ...この展開って...
「私は━━
死にたくない
まだ ここにいたいです」
明かされたブレイクの本音。
死ぬわけにはいかない、ではなく死にたくない、ですからね...。これが彼の本心だとすれば本当に切ないです。望月先生の心情描写がいつもに増して素晴らしいですね。常に飄々としているかと思いきや実は誰よりも人間味に溢れたとても魅力的なキャクラターでした。
「どうか
どれ程の絶望が待ち受けていたとしても
彼らの物語の最後に残されるものが
あの陽だまりのような
優しい希望でありますように」オズ達への願いを遺し、ブレイクはシャロンちゃんとレイムさんの前で静かに最期を迎えます。ブレイク、ここまで本当にお疲れ様でした。
ここで今巻は終了です。
さぁラストダンジョンだ!!という直前でメインアタッカー、ザークシーズ・ブレイクがまさかの退場。
自分は何だかんだ言ってブレイクは最後まで生き残るだろう、と思っていたのでここに来ての退場はかなり衝撃的でした。確かにここ最近でブレイク関連のフラグが着実に回収されているのには気付いていたけれどもまさか本当に死んでしまうとは...。残されたシャロンちゃんとレイムさんは一体どうすればいいんでしょうか!?特にシャロンちゃん!心の支えである人物を失ってしまったわけですからね...次巻で改めてシャロンちゃんの強さが問われるような気がします。
オズ達はオズワルドとヴィンセントを追って過去に行くことになるのでしょう。恐らくシャロンちゃんとレイムさんも。さりげなくエイダちゃんがラストダンジョンパーティーに同行していたのが気になりましたが、ヴィンセント関連で必要なのかな。
そろそろ黒魔術設定を生かしてきて欲しいところなにはともあれ、次巻の展開も非常に楽しみですね。
と、本当ならここで終わりにしたいところですが最後に望月先生が爆弾を投下...
次巻、最終巻あーそっかーパンドラももう終わるのかーへー残念だなーあはははははー
...って
おいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!次で終わりなのかよ!!正直もう2、3巻ぐらいは続くと思ってたよ!!ラストの表紙はアリス??それとも全員集合イラスト!?結局最後はどうなるんだよおおおおおおおお!!
...はい、泣いても笑っても次が最終巻です。望月先生曰く、更に分厚くなるとか何とか...
残る謎は
・ブレイクの質問に対するオズの返答
・ジャックとの取引の内容
・バルマ公の安否
・ノイズ関連
・レイシーの最期の言葉
あたりかなぁ...。他にも色々とあるだろうけど。登場人物それぞれが幸せだと感じられるような希望の残るラストを楽しみにしています。それでは。